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【解説】 コードの名前 その3
コードの名前その2の最後のところで触れましたが、いままで説明してきたコードは、ルート音があって、その上に他の音が行儀良く並んでいましたが、実際には、そういうコードばかりではなく、音の重なりの順序が違っていたり、構成音のいくつかが省略されていたりして、ぱっと見ても 「3 - 4」 だからマイナーだ・・・とはすぐにわからないコードがたくさん出てきます。たとえばCのコードもこういうふうに ソ を一番下に持ってくると ソドミ になりますが、いま仮に ソ がルート音だということにして、これまでの解説のとおりに数を数えてみると、 「5 - 4」 で、 「ん? なんだこれは?」 っていう話になります。 実際には ソ と ド と ミ があるという時点で、これは ドミソ = Cメジャー だな、という風にすぐに気づくのですが、これが もっと構成音の多いコードになると、順番をちょっと変わると途端に正体がわからなくなります。こういう、元の基本形からコードの構成音を重ねる順番を変えたもののことを、 「転回形」 と言って、一般のコード解説本なんかには、この転回の仕方で第一転回形とか第二転回形とか、いかにもコードの勉強をしたくなくなるような話が書いてありますが、実際にはこの転回形の話は全然重要ではなくて、コードの意味を考えたときに一番問題になるのは、一番下の音を何にするか、ということなんです。
左手も鍵盤を弾く
実はここまでまったく触れなかったことがあるのですが、それは、左手も鍵盤を弾く、ということなんです。これは堅いコード理論の話ではなく、実際にピアノを演奏するときにはとても重要になってくることなので、実際に音を聴きながら、コードにおける左手の役割について話をしながら、もう一歩踏み込んだコードの名前のつけ方について解説します。
まず先に結論を言ってしまいますが、コード・ネームには、ここまでずっと話をしてきた 「何と何と何の音が混じっているか」 を表す記号とはまったく別に、 「何の音を一番下にするか」 ということを表す記号がつくことがあります。実際には 「C on G」 のように表記をして、 on の後に続く鍵盤を一番下にする という決まりがあります。実際には on の代わりにスラッシュを使って C / G と書くことの方が多いので、ここでは 「シー・オン・ジー」 と言いますが、表記上はスラッシュで繋がれていると思って下さい。そして、こういうコードのことを、 「オン・コード」 と表現します。オン・コードというと、何か特殊なコードであるかのように聞こえますが、実は、オン・コードでなくても、ポップスをやる限りにおいては、すべてのコードには、一番下の音を何にするかというのはちゃんと決められているんです。それが何かというと、例えばコードが C といった場合には、そこには C = ド を一番下にしなさい、という意味が隠されているんです。もっと言えば、C と書いてあれば、 「ドミソ」 を弾くのは正しくて、 「ミソド」 を弾くのは間違いだ、ということになります。
さて、ここで左手の話に戻りますが、実際にポップスの演奏をするときには (特にこの場合にはピアノを弾き語る場合のことを想定していますが)、右手と同時に左手も演奏をしています。ということは、この一番下の音を何にするか、という話は、つまりは左手は何を弾くのか、という話だということが言えるわけです。実際には左手も複数の鍵盤を弾くことがあるわけで、左手の一番下の音は何を弾くんだ、という話ではありますが、あとで伴奏の話をするときに触れますが、左手の演奏方法の基本事項として、左手は単音(ひとつの音)だけを弾くつもりでいていい、という話があります。で、結局このオン・コードの話というのは、要するに 「左手が弾く音に関する話」 だ、ということになるわけです。(あくまでもポップスの話です)
イキナリ結論ばかり並べてしまいましたが、いくつか例を示しながらオン・コードを具体的に見ていきます。
オン・コード の実例
まずは演奏動画にもある 「POPSTAR / 平井堅」 のイントロ (=この場合はサビ) の部分を弾いてみます。
・・・と、その前に、少し右手のことについて触れておくと、ボイシング (=どう鍵盤を押さえるか) を考えるときには、手はできるだけ動かさないほうがいい、つまり、移動距離が短くなるようにボイシングを選ぶ (=転回形を選ぶ) ほうがいい、ということがあります。
実演。 ※動画を参考にして下さい。
実際のコードではなく、説明しやすいように少し簡略化しています。
では、次にオン・コードを無視して弾いたバージョンをお聞かせしますので、比較してみて下さい。
実演。 ※動画を参考にして下さい。
このように、大事なのは、右手がどういうボイシングをしているか、ということ (転回形の話) ではなく、左手が何を弾くかだ、ということがお分かりになると思います。
オン・コード について補足
最後にオン・コードについて補足しておかなければいけないのが、 「オン・何とか」 の 「何とか」 の部分は、別にそのコードの構成音でなくても構わない 、ということです。例えばさっきの POPSTAR のオン・コードはすべて、もとのコードの構成音のうちのひとつを一番下にしていましたが、「C / A」 のようなコードもあります。
これは、右手は C = ドミソ で、左手は ラ を弾け、という意味です。まるでピアノの楽譜のように、右手と左手で別々に五線があるような感覚ですが、コードというのはまさにそうなんです。
・・・ で、よく見ると、このコードは ラドミソ なので、 Am でいいじゃないのか? という話にはなりますが、これは楽譜を作っている側が勝手に選んでいるだけなので、どちらでも構わないと僕は思っています。もちろん音楽理論的にどちらかがふさわしい・・・というような話はありますが、はっきり言って僕もそれを正しく判断できるほどしっかりした知識があるわけではないので、乱暴かもしれませんが、どっちでもいいと思います。それよりも大事なのは、見ているほうがわかりやすいほうが絶対にいい ということです。自分でコードを書くときに、Am7 よりも C / A がいいという人はそういう書き方をすればいいという話です。で、例えばこれが Am9 の場合には、ラドミソシ なので、これは ラ + ドミソシ、つまり CM7 / A と書いたほうが、見た目上、右手の構成音が減って、明らかにボイシングが早くなります。と、いうことなら、絶対に Am9 よりも、オン・コード で書いたほうがいい、ということです。
例えそれが音楽理論的に間違っていたとしても・・・と、僕は思っています。
まとめ
以上、コードの名前について、3つの動画を使って解説をしてきましたが、コード・ネームのつけ方とか、コード・ネームを見てどう鍵盤を押さえるか、という話はここまでにして、次からは、このコードの知識を、実際に演奏をする (弾き語りをする) ときに、どういう風に役立てるか、という話をしていきたいと思います。